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2/12(土)・13(日)完成見学会開催!長岡市錦「光井戸のある家」。新しいONE-BOX FOR ONE FAMILY.

※本記事は住宅情報WEBマガジン Daily Lives Niigata による取材記事です。


長岡市の工務店×三条市の設計事務所のコラボがスタート

長岡市与板町蔦都に拠点を構える渡邉大工と、三条市神明町に事務所を構える株式会社イイヅカカズキ建築事務所

この2社の協働によるプロジェクトが2021年にスタートし、現在長岡市錦にて、第1棟目となる住宅の工事が最終局面を迎えている。

渡邉大工は渡邉淳也さんが代表を務める工務店。長岡市出身の渡邉さんは幼少期に実家の建て替えでお世話になった大工に憧れ、自らも大工の道へと進んだという。

渡邉大工·渡邉淳也さん。

はじめは地元長岡で大工の修業を積んでいたが、23歳の頃に富山県へ移り住み、数年間宮大工としての経験を積み重ねた。その後再び長岡に戻り、31歳で独立して今年12年目を迎える。

現在は長岡を中心に住宅のリフォームや新築を行っており、宮大工の経験を活かして神社や鳥居の修繕といった特殊な仕事にも対応できるのが特徴だ。もちろん伝統的な継手仕口を手刻みでつくることもできる。

「家を建てることでお客さんに喜んで頂くことはもちろん、住んでから不具合が出ないように注意して施工を行っています。特に長岡は雪が多い地域ですから、大雪が降った時の最悪の状態をイメージし、安心して暮らせる家づくりを心掛けています」と渡邉さんは話す。

一方、株式会社イイヅカカズキ建築事務所の飯塚一樹さんは三条市出身。2007年に独立し、新築住宅や店舗、リノベーション、鉄骨倉庫や老人ホームなど幅広い建築の設計を行っている。「最近は木造住宅が中心で、HEAT20のG2グレードをクリアする高気密高断熱仕様の家づくりを行っています」(飯塚さん)。

株式会社イイヅカカズキ建築事務所·飯塚一樹さん。

「ONE-BOX FOR ONE FAMILY.(家族を包むワンボックスの家)」をコンセプトに掲げ、家中が暖かい“温度のバリアフリー”を叶える設計を得意としており、家族構成やライフスタイルの変化にも対応できるシンプルさを大事にしている。

設計事務所と工務店のネットワーク「R+house」の登録建築家でもあり、これまでに新潟県外で累計166棟の設計に携わってきた。現在も年間30棟程度の県外のプロジェクトに関わっている。

そんな2人が出会ったのは今から1年程前。2021年の2月のことだったという。

「以前は県外の建築家と協働で家づくりをしていましたが、地元の建築家と一緒に仕事をする方針に変えようとしていたんです。その時に、知人に飯塚さんを紹介してもらい、さっそく会うことになりました」と渡邉さん。

「ちょうど事務所のWEBサイトのリニューアルが終わり、改めて事務所のコンセプトも整えたタイミングでした。それで、渡邉さんに会った時に僕が大事にしている家づくりの考え方を2時間くらいかけてお話ししたんです(笑)」(飯塚さん)。

飯塚さんの建築にかける情熱や妥協しない姿勢に共感した渡邉さんは、すぐに協働を依頼したという。「気密や断熱に関する知識が豊富でこだわりも強く、飯塚さんと一緒に仕事をすることで自分も向上していけると思いましたね」(渡邉さん)。

2つの光井戸がある27坪の住まい

2/12(土)・13(日)に長岡市錦で完成見学会を開催するK邸が、現在、渡邉さんと飯塚さんが取り組んでいる1棟目の住宅。

敷地面積は54坪で、道路は東側接道。間口8.2mに対して奥行は22mと、東西に細長い敷地条件だ。

「敷地調査をしてみると南北両隣に家が迫っていました。そのような環境で、どのように光を採り入れ、プライバシーを保つのか?というのが設計のテーマになりました。その課題を解決するために、『光井戸』をつくることにしたんです。全体のベースとなるコンセプトとしてONE-BOXがあり、それにプラスして内外2つの光井戸があるところがこの家の特徴ですね」と飯塚さん。

三角屋根のフォルムがかわいらしい外観で、外壁の大部分に魚沼杉を使用。木の質感が優しく温かみがあふれている。

車を止めてアプローチを進んでいくと、ポーチの先には4畳の中庭が設けられている。1階部分は壁で囲まれているため、隣家から中をのぞくことはできないが、ダイニング・キッチンからはこの中庭が目の前に眺められる構成だ。

上から入ってきた光は白いガルバリウム鋼板の壁に反射しながら、中庭と室内に光を届けてくれる。それが“外の光井戸”だ。

一方、“中の光井戸”は、リビングの上にある。

リビングの壁側は3畳の吹き抜けになっており、2階のFIX窓から光を採り込むことができる。外の光井戸と同様に、壁に反射しながら1階へと光を導く計画だ。

「中の光井戸は、自然光を採り込むだけでなく、空気の通り道にもなります。吹き抜けを通って空気が循環することで、上下階の温度ムラを抑えることができます。高い位置に窓を設けることで、カーテンを閉めることなく常に光を採り込めるのも特長ですね」(飯塚さん)。

UA値=0.28、HEAT20 G2基準値を余裕で上回る断熱性能

延床面積は27坪と比較的小さい住まいのため、窮屈にならないように、1階は仕切りが少ないワンルームにしている。

「部屋がたくさんあるブドウ形ではなく、大きな空間が一つあるリンゴ形のプランです。僕はキッチンを住まいの中心に置くことを推奨していますが、この家でもLDKの中心にキッチンを据えており、そこから中庭やリビングを眺めることができます。一方、開放的な1階とは対照的に、2階は子ども部屋、ファミリークローゼット、寝室といったプライベートな空間を配しています」(飯塚さん)。

2階の子ども部屋は2室に分けて使える。
2階の廊下脇にあるファミリークローゼット。
2階寝室から子ども部屋を望む。

二酸化炭素の排出量削減や健康維持という観点から、近年は住宅の高断熱化が進んでいる。イイヅカカズキ建築事務所では、UA値=0.34以下(HEAT20 G2グレードクリア)という高い基準を標準仕様としており、今回設計を行ったK邸はUA値=0.28という性能値を誇っている(※UA値は数値が小さいほど断熱性能が高い)。

それを実現するため、一般的な壁内の充填断熱に加え、外側にフェノールフォーム系断熱材を貼る「付加断熱」を行っている。人間の服装に例えると、1枚でも暖かいダウンジャケットを2枚重ねにして着ているようなイメージだ。

冬場の暖房はエアコン1台で床下から家全体を暖める「床下エアコン」を採用。そのエアコンはTVボードの下に隠されており、リビングを中心にじんわりと家の中全体を暖められる。

トイレや脱衣所、浴室といった冬場に寒さを感じやすい場所も全て暖められるため、ヒートショックによる健康被害のリスクも抑えることができる。

リビングと階段の2つの吹き抜けを設けたことで、暖気がスムーズに家中を循環するのもポイントだ。

換気システムは、夏の高温多湿の空気や冬の冷たい空気を直接家の中に引き込む第3種換気扇ではなく、換気時の熱エネルギーロスを押さえられる熱交換型の第1種換気扇を採用。

夏も冬も快適かつエコロジーな暮らしを実現できるように、高い断熱性能に加え、そのようなさまざまな工夫が組み合わせられている。

また、耐震性能は許容応力度計算をした上で最高等級の3をクリア。これもイイヅカカズキ建築事務所では、ごく当たり前のこととしている。

実用性と美しさを両立する納まりを探求

内装の仕上げは、床がオーク材。はっきりとした木目が美しい堅木で、家具がよく映える人気のフローリングだ。

壁と天井の仕上げは、調湿消臭作用を持つ天然素材由来の「モイス」を使用。内装材には自然素材由来のものを中心に選んでいる。

「建築はディテールが集まってできているものですので、納まりのきれいさも大事にしています。具体的には、極力余計な線が現れないことに気を遣っており、例えば巾木(はばき、壁と床が取りあう部分の隙間を隠すための部材)などの見切り材を使わないデザインにしています。そこは、施工をする渡邉さんと喧々諤々(けんけんがくがく)やりながら、進めているところですね。僕は『こうやりたい!』というのをズバズバと口に出すんですが、渡邉さんはそんな僕の理想をしっかり受け止め、難しい施工方法に挑戦して頂いています」(飯塚さん)。

渡邉さんは「これまでやったことがない納まりもあり苦労していますが、要望に応えていきたいですね。ディテールを美しく見せつつも、『逃げ』をつくっておかないと最後の『仕舞い』でダメになることがありますので、耐久性や機能性も保ちつつ一番いい納め方になるように模索しながら施工にあたっています」と、飯塚さんの設計意図を実現するために知恵を絞る。

高断熱住宅の真価を感じられる、貴重な真冬の見学会

昨年、飯塚さんは自身の建築思想「ONE-BOX FOR ONE FAMILY.」を20の項目に分けて解説したコンセプトブックを作り上げた。その思想に基づいたブレない提案を特徴としている。

一方の渡邉さんは、気象条件の厳しい長岡で安心して住み続けられる家を丁寧につくり上げてきた実績を持つ。

そんな2社のコラボレーションでつくられた「光井戸のある住まい」が、長岡市錦に間もなく完成する。

プライバシーを保ちつつしっかりと光を採り込み、自然を身近に感じながら暮らす。寒い冬でも家中が快適温度に包まれ、1年を通して不快感のない日常を過ごすことを目指した住まい。さまざまな工夫が延床面積27坪に凝縮している。

「1年で最も寒い時期に行われる今回の見学会は、UA値=0.28の実力を体感するのに絶好の機会とも言えます。ぜひこれからの住まいを考えるために、多くの人にご体感を頂けたらと思います」(飯塚さん)。

「魚沼杉の外壁や、モイスの内装仕上げなど、大工による手仕事もぜひ見て頂けたらうれしいですね」(渡邉さん)。

写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平


「光井戸のある家」完成見学会

●日時 2022212日(土)·13(日) 10:0017:00 ※予約制
●場所 長岡市錦(詳しい住所はご予約後にお知らせします)
●見学希望の方は、渡邉大工またはイイヅカカズキ建築事務所に、見学希望時間·見学人数をお知らせください。
●お申し込み·お問い合わせはこちらから→渡邉大工イイヅカカズキ建築事務所

【新型コロナウイルス対策について】
·予約制で少人数に絞ってご案内します。
·マスクの着用、手指消毒のご協力をお願いします。
·37.5度以上の発熱がある方、体調がすぐれない方は入場をお控えください。